2013/03/25

インド帰国の途


3月24日 日曜日

目が覚めると、辺りはまだ暗かったがもう5時半で、そろそろデリーに着く頃だ。
隣のオジサンもしっかり目覚めて、到着を今か今かと待っているようだった。
まだ暗いというのに、道路では子供たちが走り回って遊んでいる。
もう遊んでいるのか、まだ遊んでいるのか。

6時ちょうどにバスはオートリクシャーが溜っている所で止まり、みんな一斉に降りた。
ダラムサラに比べるとデリーはとても暖かい。
ここがデリーのチベット難民が住んでいるエリアらしい。
インドへチベット人が亡命し始めてから、もう50年以上経つ。
きっとインドのいたる所にチベット難民地区があるんだろう。

オートリクシャーは高そうだったので、サイクルリクシャーのおやじと交渉し
30Rsで最寄りの地下鉄の駅まで行ってもらう。
15分くらいで無事駅に着き、そこからニューデリー駅まで行ったが
朝から車内は満杯で出口まで行けず、朝から「降りるよー!!!」と叫んで
人ごみを突き進み、なんとか降ろしてもらった。

ニューデリー駅から電車を乗り継ぎ空港まで着いた。
すぐにチェックインしゲートをくぐったが
デリー空港は本当にキレイになっていて、心がとても落ち着いた。
小腹が減っていたのでサブウェイでバケットを買った。
ベジメニューがあまりにまずそうだったので、何ヶ月かぶりにチキンを注文したみたが
やはりあまり口に合わなかった。ごめんねチキン。
早く日本のゴマドレッシングが食べたい。

チェンナイ行きの飛行機は午前11時に出発し
機内食も出たがあまり美味しくなかった。
もう体がインド料理は勘弁してくれと言っているような気がする。
機内では眉間に皺を寄せ英字新聞を読んでみたが、もちろん内容はわからない。

午後1時半頃、飛行機はチェンナイ空港に着いた。
上空から見たチェンナイの町は、たくさんの椰子の木と
カラフルで角張った民家がちらばっていて、くすんで汚いデリーとはまた全然違った。
外気温は34度らしい。
国内線から国際線まで歩いて移動したが、私の次のフライトは午後6時で
まだかなり時間があり、一回入るともう出られないんだよと
入口警備のオジサンに警告されたので、まだ中には入らず時間を潰すことにしたが
チェンナイ国際空港は、デリー空港と比べるとほんとうにしょぼく
ちょっと気分が滅入る。
その上レストランも値段だけアホみたく高いので
搭乗受付が始まってすぐに中に入った。

私の荷物はラップトップ含めて10kgだが、手荷物の限度は7kgなので
ラップトップは隠してチェックインしたが大丈夫だった。
ちょろいなと思ってホッとしながら出国審査に向かうと
その手前で職員の女性にその荷物をチェックさせてと言われ、ギョギョッとし
重さを量られたが、これはラップトップだからと言うと
じゃあ問題ないわねと言われホッとしたが、モタモタしているとまた
ねえその荷物ほんとにラップトップが入ってるの?と確認され
さらにギョギョッとした。
結局問題なく出国審査を通り、荷物検査もパスしたが
まさしく口から心臓が飛び出しそうなのを
両肺によってかろうじて捕まえた感じだった。
やはり何かをコソコソするのは性に合ってないらしい。ドドドッと疲れた。

搭乗ゲートにやっと辿り着いたが、ほんとうに閑散としていて
食べ物もろくな物がなく、それでも腹が減ったのでカップラーメンを一つ食べた。
スパイシーベジタブル味か、マサラ味かの2択で、しょうがなくマサラ味を選んだ。
搭乗ゲートも確定しておらず、色々と気に障ることがたくさんあり
少しずつ苛立ちがつのっていった。

やっと搭乗時間になり、長蛇の列ができ、そこにしょうがなく並ぶが
インド人は列を作ったときに、後ろのやつがかなり近づいてきて
背中にくっついてくるので、非常にしゃくにさわる。
やっと機内に乗り込んだが、あいかわらず携帯をいじったり、ウロチョロしたり
他人の席に勝手に座って平気な顔をしてるヤツがいて、見ているだけでイライラする。
フライトは3時間半で微妙に長く、本や新聞を読んでいたが間が持たず
眠たくもないので、目を閉じて心を落ち着けようと思ったが
そんなときに限って隣のオヤジが、インド音楽をかけ始めた。
もう機内は真っ暗で寝ている人もいるというのに
カッコイイとでも思っているのか、ビートの聞いたクソうるせえ曲を
しかも何度もリピート。
うるせえと直接言ってやろうかと何度も思ったが、日本ではまだしも
ここはインドだし、うるさいと注意するのは筋が通らないと思い、ずっと我慢した。

現地時間0時に、飛行機はやっっとマレーシアのクアラルンプール空港に着いた。
精神的に非常に悪い状態にあり、機内から降りるというときに
うるさかったと思われるオヤジの後ろに無理矢理割り込み、オヤジをキレさせた。
文句を言いながら睨んできたオヤジを、笑顔で睨み返した。
もちろんそれで気分はスッキリするどころか、軽い自己嫌悪で落ち込んだが
何も考えずに体が動いてしまったので、後悔も何もない。
とにかくそのときは周りを気にしないインド人の性格に、腹が立ってしょうがなかった。
ただあっちの行為は悪気がないのに対し、わたしの行為は悪意の塊である。

そこからシンガポール空港行きのフライトは、ちょうど6時間後の早朝だったので
まだ搭乗ゲートには入れずに、入国審査状の前のちょっとしたベンチで
一夜を明かさねばならなかった。
しかし運良くそこもwifiが使えたので
奥さんに無事に着いたとメールを送ることができた。
ベンチは凸凹していて、どうせ熟睡できないだろうなと期待せずに横になると
意外にも軽く寝過ごすほど寝たらしく、起きて顔を洗いすぐに搭乗ゲートに入った。

まだ早朝だというのにものすごい人がいて、世界各地へ飛ぶたくさんの便があった。
ネットをしていると30分ほどで搭乗アナウンスが流れ
機内に乗り込むことができた。
機内にいたAir Asiaのチャラい客室乗務員を見て
ああやっと東南アジアに帰ってきたんだなと実感した。
飛行機は1時間ほどであっというまにシンガポールへ着いた。

とても腹が減っており、早く帰って朝飯を食おうと思い
足早に空港をあとにし地下鉄に乗り込んだ。
朝の地下鉄は満員だったが、みんな人とは触れないように微妙な感覚を保っており
各駅で人が乗り込もうとしてもまったく奥へ詰めようとはせず
多くの人が乗り込めずに見送っていた。
いつものシンガポールの光景だが、それを見たときに
もしかしたら俺がインドへ行く理由は
人の優しさを求めていってるのかもしれないなと思った。
結局また行きたいといつか思うのかとも考えたが、もうそれはないなと思った。
もう取り立てて見たいと思うものがない。

まだまだインドには私が見た事もない、遺跡や変人や奇祭があるわけだが
わたしが見たいものは全部見ることができたと思う。
インドに限らず、今回の旅はわたしの旅行へ対する好奇心に
良い感じに終止符を打ってくれたような気がする。
もちろんこの先も旅行は行くだろうが、もうあまり多くを求めたりはしないだろう。

地下鉄からバスに乗り換え、家の前のバス停で降りると
公営団地の13階にある家の窓から、奥さんが手を振っているのが見えた。
そのとき朝食で食べたスクランブルエッグは、ほんとうに美味しかったなあ。

おわり





4 件のコメント:

  1. あぁ、無事に帰れて良かったね。読んでてこっちが安堵したよ。

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  2. いやあほんと一日0.5食だったときには死ぬかと思ったよ。人生、生きてこそだなあ。

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  3. 最後まで一気に読んでしまいました。
    YO!HEY!さんの心の動きが人間臭くて面白いです。
    インドで達観して帰ってきたのかと思えば
    最後の機内でイライラしたり。
    いつか…一緒にインド行ってみたい…ような、絶対に無理なような…。

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  4. 御精読ありがとうございマサラ。苛立ちと困難に満ちあふれた素敵な旅でしたよ!Fuckって14回言いました。
    達観ていうのは、僕は一時的なものだと思うんですよ。
    悟りが開けたってよく聞きますけど、あれもすぐ閉じたりします。
    きっとJUNさんも、日常でよく開いてると思いますよ。
    インドはほっといて、JUNさんはネパールに行ったほうがいいと思いますね。

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