2018/08/21

組長さん

もう8月20日である。8月後半は一人でどこかに行く予定であったが、結局どこにも行けず真面目に仕事をしている。奥さんは8月頭からカナダへ行って、まだ帰ってこない。マレーシアの家には、なぜか中国人家族が間借りしていて、一回行ってはみたが、一緒に住むのがちょっとしんどそうなので、すぐにシンガポールに帰ってきた。それからもう2週間くらいシンガポールにいる。

久しぶりに一人でシンガポールに住んでみると、割と居心地はいい。やっぱ街はキレイだし、欲しい物や食べたい物はだいたい手に入る。最近はいっしょに飯食いに行ったりする友達も増えたので、全然孤独感もない。マレーシアに比べると飯は少し割高だが、そう言ったって300円ほどで飯一食は賄える。唯一ネックなのは奥さんの親と一緒に住まなきゃいけないことだ。奥さんと二人だけで住めればほんと言うことなしなんだけど、新しい家に引越すにはまだ二年ほど待たなきゃいけないらしい。彼らと住むのはほんとしんどいわ。

こう考えてみると自分はほんとに気難しいというか、寛容さがないというか。マレーシアでもシンガポールでも、みんな親と同居してちゃんとやってるのに。しかし元々そういう性格なんだからしょうがないだろう。

先月末にとても懐かしい人に再会することができた。もう5、6年以上前に、マラッカの安宿で友達になった元ヤクザの組長さんだ。しばらく連絡が取れない状態だったが、去年ついに消息がわかり、先月ついに組長さんからシンガポールに仕事で行くから、飯でもどう?と誘ってもらった。とても元気そうで、私の事もちゃんと覚えててくれて嬉しかった。飯をごちそうになり、今までの消息不明だったことの話なども少し聞かせてもらった。

組長さんは本も出版しているので、その本を今月買って読んでみた。話を聞いてもよくわからなかった彼の素性が、ようやく半分くらいだがわかった。そして本の内容も非常に興味深かった。私は一時期、陰謀論などにハマったことがあるが、しかしいまいちそのスケールのでかい陰謀と、自分の庶民的な生活をうまく結ぶことができなかったが、その本はそれをうまく繋いでくれたように思う。その本の内容を全て鵜呑みにはしないが、とても腑に落ちることばかりだった。

面白かったのは、さすがにマラッカでお会いしただけあって、私が行ったことのある場所について色々書かれていたことだ。ラオス、タイ、ミャンマー、カンボジア、ベトナム、中国、インド。のんびりした田舎の裏側でけっこう堂々と行われている、人身売買、臓器売買、麻薬、偽札の流通などなど。そしてそれに絡む、政府、役人、企業、慈善団体、国連。思った通りに、実は思っていたよりちょっと以上に世界はおどろおどろしく、救いようがないらしい。豚肉にされる豚がかわいそうと、動物の心配をしている場合ではないかもしれない。それくらい人身売買、臓器売買の闇は深く、そして実は我々の生活とも接点があったりするかもしれない。

今度から旅行をするときは、そこらへんをもっと注意深く観察したい。そう考えると、不謹慎だがちょっとワクワクしている自分がいる。世界は一つしかないが、実は様々な顔を持っていて、違う角度に立つ事ができれば、今まで気づかなかった新たな顔が見えてくる。そして自分の中で点と点だったものが、一本の線で結ばれる。私はそれが人生で一番の快感だ。点と点が線に、そしてその線の集合がいつか何かの形に見えてくるのかもしれない。死ぬ前にそれが見えたら上出来だと思う。

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